こんにちは、Keiです。
論文を初めて書く方が意外と気になるのが、論文1本書くのにかかる時間です。
特に、限られた時間の中で論文を投稿する必要がある社会人大学院生や企業研究職の方にとっては大事な情報ではないでしょうか。
私は普段タスクシュートというツールを使用しており、日々のタスク実行時間を1分単位で記録しています。もちろん論文執筆にかかった時間も記録されています。
そこで本記事では、英語論文の執筆にかかる時間がどれくらいか調べてみます。
調査方法
対象とする論文は、私が博士課程の大学院生時代に執筆した論文4本とします。
いずれもIMRAD (Introduction, Methods, Results, Discussion) 形式です。
No | 本文の文字数 (words) | 表の数 | 図の数 |
---|---|---|---|
1 | 3,074 | 2 | 2 |
2 | 3,728 | 3 | 3 |
3 | 3,348 | 9 | 3 |
4 | 3,432 | 5 | 3 |
IMRAD形式に沿わない論文や執筆時間が追跡できない論文は除外しました。
執筆時間の算出方法
各論文の執筆にかかった時間を算出し、その平均値を英語論文を1本書くのにかかる時間としました。
また、Introduction, Methods, Results, Discussion, Abstractの各セクションを書くのにかかった時間も算出しました。
執筆時間はタスクシュートのログをもとに1分単位で算出しました。
タスクシュートには、画像のようにタスクの実行時間がログ(実績)として記録されています
今回の目的は論文執筆にかかった時間を算出することのため、明らかに執筆以外の作業をしていた時間は除外しています。
集計結果
各セクションおよび合計の執筆時間は以下のとおりでした。
No | Introduction | Methods | Results | Discussion | Abstract | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 7.5 | 11.5 | 10.8 | 6.2 | 1.0 | 37.0 |
2 | 7.2 | 7.4 | 7.9 | 4.9 | 0.8 | 28.2 |
3 | 7.2 | 5.3 | 17.4 | 5.6 | 0.8 | 36.3 |
4 | 4.1 | 14.1 | 6.0 | 4.7 | 0.6 | 29.5 |
平均 (±標準偏差) | 6.5 ± 1.6 | 9.6 ± 4.0 | 10.5 ± 5.0 | 5.4 ± 0.7 | 0.8 ± 0.2 | 32.8 ± 4.5 |
よって、論文1本あたりの執筆時間は平均32.8時間でした。
考察: 短くない?
論文1本あたりの執筆時間は平均32.8時間ということですが、感覚としてはちょっと短すぎる気がします。絶対もっと時間かかってるでしょ。
今回はタスクシュートのログから論文を執筆していたと推測される時間を抽出しました。一方で、データ解析の時間は含めていません。
執筆時間の中には図や表を作成していた時間も含まれているのですが、図表の作成時には解析ソフトを併用していることも多いため、実際には論文用の図表作成中にもかかわらず、データ解析中として除外された時間がかなりありそうです。
また、今回のデータはタスクシュートのログを元にしているため、実際には論文を書いていたにも関わらずログに残っていない時間も多かったのでは無いかと推測されます。私自身、当時は今ほどタスクシュートの記録を完全には取れていなかったと記憶しています。
そのため、個人的な感覚としては、今回の結果の1.5倍(49.2時間)は少なくともかかっていたのではないかと感じます。
ただし、人間の時間感覚は全くあてにならないので、もしかすると本当にこれくらいの時間で書けるのかもしれませんが(そうだったら嬉しい)
なお、この調査にはいくつか限界があります。今回は手動で記録したタスクシュートのログを元に執筆時間を算出したため、前述したように実際には論文を書いていたにも関わらずログが残っていない時間があった可能性があります。また、論文の執筆者は成人の日本人1名のみであり、一般化はできません。そして、論文の執筆方法は研究領域によって大きく異なるため、他領域における執筆時間は不明です。
結論: 論文執筆にかかる時間は1本あたり平均32.8時間 (執筆のみ)
以上より、論文執筆にかかる時間は1本あたり平均32.8時間 (執筆のみ)という結論になりました。
ただし、これは本当に執筆のみの時間かと思います。図表の作成時間やデータの追加解析、IMRADセクション以外の作成、その他投稿準備なども入れたら、少なくとも50時間程度はかかっていたと思います。さらに倍かかっていてもおかしくありません。
とはいえ、今は英語の翻訳方法なども充実しており、執筆時間も以前よりかなり短縮できるはずです。
もっと短い時間で書き上げられるように努力していきたいと思います。
本記事は以上です。ありがとうございました。