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仕事術・タスク管理

タスクシュートの効果を考察する

2024年1月4日

こんにちは、Keiです。

以前、タスクシュート認定トレーナー仲間の@dyamamotoさんが大変面白い記事を書かれていました。

『タスクシュートで「ポチっと」押すと、何が起きているのか』というタイトルで、文字通りタスクシュートでタスク実行ボタンをポチッと押したときに脳内で何が起きているのか、脳科学を取り扱った記事の内容から考察されていたのですが、とても興味深い内容でした。

https://twitter.com/kei_gem0905/status/1715387199846506630

記事内で考察されていたタスクシュートが起こす脳内現象について読んでいると、私が過去に紹介したタスクシュートとマインドフルネスの関係のような、タスクシュートと時間認知の観点からも説明ができるように思いました。

そこで本記事では、私が感じているタスクシュートの効果について、時間認知的な観点から考察してみようと思います。

なお、本記事の内容はほぼ私の想像です。科学的に誤りがあっても笑って許してください。

タスクシュートは「現在」を強く意識させる

タスクシュートでタスクの実行ログを記録する手順は、これから行うタスクをプランとして登録し、実行と同時にタスク実行ボタンを押し、終わったら記録を止めるという流れになります。

この流れを分解してみると、①今から行うタスクにプランとして名前を付けるという「言語化」、②タスクの開始と終了を意識することによる実行中タスクの「認知」という2つのプロセスを経ることがわかります。

これらの「言語化」「認知」のプロセスによって、タスクシュートは「自分が今何をしているのか」を強く意識させます。

すなわち、今という瞬間「現在」を強く意識させる効果を発揮します。

このタスクシュートの「現在を強く意識させる」という効果が、「今という瞬間に集中する」というマインドフルネスの効果に通ずるということは、過去に記事にまとめた通りです。

なぜタスクシュートでマインドフルネスを実現できるのか

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人間が認識する「時間」とは何か

少し話が変わりますが、ここで「時間」というものについて考えてみます。

「時間」とは分野によって様々な定義をされる概念ですが、人間の認知においては「脳がモノゴトを知覚し、処理するために作り出すものさし」と言えます。

目をつむって1分数える、いつもより時間の経過が早い(または遅い)と感じる、カレンダーを見なくても今日が何日か言えるなど、このようなことができるのは、脳には時間というものさしを使ってモノゴトの長さや前後関係を知覚する能力が備わっているからです。

また、人間の脳が用いる時間というものさしは、「過去」「現在」「未来」という区分で構成されているとされます。

このものさしがあるから、「①雨が降った」「②雨が降っている」「③雨が降りそうだ」という言葉を聞いた瞬間に、「①は過去」「②は現在」「③は未来」と、いつの時制の話しているのか理解することができるのです。

そのため、認知症などによって時間を認知する脳の機能が低下すると、今日が何日かわからなくなったり、過去の自分と今の自分が混ざったり、過去の出来事がこれから起こると誤認するといったことが起こります。

「現在」を認識する大脳の楔前部 (けつぜんぶ)

脳は時間を「過去」「現在」「未来」という区分に分けて認識しています。

そのうち、特に「現在」を認知するときには、大脳にある楔前部 (けつぜんぶ) という部位が重要な役割を果たしていることがわかっています。

オレンジ色の所が楔前部 (Wikipediaより)

楔前部の過剰な活性化により「マインドワンダリング」が発生する

楔前部はいわゆるデフォルトモードネットワークと呼ばれる脳の神経回路を構成しており、ぼんやりとしている時や、過去や未来について考えている時に活性化します。

タスクシュート的に言い換えれば、「現在」に集中していない時に、デフォルトモードネットワークは活性化します。

そして、楔前部を含むデフォルトモードネットワークが過剰に活性化しているときに、思考が集中せず雑念が次々と湧いてきたり、空想が止まらないといった、心の迷走(=マインドワンダリング)状態になりやすくなります。

一方で、計算問題に集中している時など、脳全体が目の前の課題に対して活性化しているときには、相対的にデフォルトモードネットワークの活性が抑制されるとされています。

「現在」に集中しているときに起きていること

「現在」に集中しているとき、楔前部を含むデフォルトモードネットワークの活性は相対的に抑制されます。

同様の現象が「今に集中する」マインドフルネスによっても得られることがわかっています。

マインドフルネスによって楔前部を含むデフォルトモードネットワークの活性が抑制されることで、雑念や空想が止まらなくなるマインドワンダリング状態が解消されるのです。

それならば、「現在を強く意識させる」タスクシュートによってもデフォルトモードネットワーク活性を抑制し、マインドワンダリング状態を解消できるのではないかと推測できます。

マインドワンダリング状態では、様々な不安や恐れが生じてきます。そして不安や恐れは、先延ばしを誘発したり、作業の継続を阻害します。

タスクシュートを使い続けていると先延ばしせずにタスクに着手できるようになったり、タスクに集中して取り組めるようになったりします。

このタスクシュートの効果には、デフォルトモードネットワークの活性化抑制によるマインドワンダリング状態の解消が関わっているのかもしれません。

余談: 「今に集中する」「今ココ」「順算思考」「一寸先は闇」について

タスクシュートを実践する方の多くは、先送りを防止したり目の前のタスクに集中するための方法として「今に集中する」「今ココ」「順算思考」といった言葉を使います。

順算思考については以下の記事にまとめています。

【タスクシュート】「順算思考」と「逆算思考」を考える

続きを見る

「今に集中する」「今ココ」「順算思考」は、すべて「現在を強く意識する」ことによって達成できる概念です。

現在に集中せずに過去や未来を空想したり、将来からの逆算思考を強めてしまうと、不安が増強し、いつまでもタスクに着手できなくなったり、一つの作業に集中できなくなったりします。

「今に集中する」「今ココ」「順算思考」といった概念は「現在に集中することで上記のような失敗を防止しよう」と言っているのです。

また、「一寸先は闇」という表現を使い、「先のことはわからないのだから、まだ見ぬ闇の中の未来を見て恐れるよりも今に集中すべき」と説く場合もあります。

さて、「今に集中する」「今ココ」「順算思考」「一寸先は闇」という考え方というのは、ちょっと乱暴にまとめてしまえば、いずれもやっていることは「タスクシュートによって現在に集中することでデフォルトモードネットワークの過剰活性を抑制し、マインドワンダリング状態を解消する」と言い換えられそうです。

そしてこれこそが、タスクシュートのユニークな効果を特徴付けているようにも思います。

他のタスク管理ツールでは、タスクの開始から終了までを記録するようなことはないので、「現在に集中する」効果が弱いです。

タスクシュートが単なるToDoリストやライフログツールと異なるのは、この「現在に集中する」効果のためなのでしょう。

タスクシュートは現在への集中によりマインドワンダリングを解消する

本記事では、タスクシュートの実践によって得られる効果の一側面について、時間認知的な観点から考察しました。

タスクシュートは「タスクの開始時間と終了時間を記録する」という行為を通じて現在を強く意識させます。

この「現在を強く意識させる」というタスクシュートの特徴によって、心の迷走 "マインドワンダリング状態" を解消する効果が期待できそうです。

そしてこのマインドワンダリングの解消が、先延ばしせずにタスクに着手できるようになったり、タスクに集中して取り組めるようになったりする「タスクシュートの効果」に関連しているのではないかと考えました。

タスクシュートは間違いなくマインドワンダリング状態の解消を目的に開発されたツールではないのですが、それがこのような副次的効果を発揮しうるというのは驚きです。

他のタスク管理ツールでは解決しなかった悩みがタスクシュートによって解消されるのは、こういった効果によるのかもしれません。

本記事は以上です。ありがとうございました。

[ 参考文献]
北澤茂, 時間順序をつくり出す神経メカニズム, BRAIN and NERVE 69巻11号, 2017
亀谷秀樹, 自己意識の脳科学, 科学と仏教思想, 2023

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  • この記事を書いた人

Kei

タスク管理やライフハックが好きな研究者|医学博士|株式会社CxO|タスクシュート認定トレーナー|主な発信内容はタスクシュートと研究です。

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