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仕事術・タスク管理

「受動的な仕事」とタスクシュートの相性

2022年11月17日

こんにちは、Keiです。

タスク管理術に迷っている方全員にタスクシュートをオススメしたいと思っているタスクシュート推しの私ですが、残念ながら誰にでもタスクシュートは使いやすいメソッドではないとも思っています。

結論から言えば、「受動的な仕事」をしていらっしゃる方は、仕事のすべてをタスクシュートで完璧に記録するのは少々無理があると思っています。

一方で、フリーランスのような能動的に時間の使い方を決められる業態の方には最高にフィットするメソッドだと思います。

では受動的な仕事をしている方はタスクシュートを使っても意味はないのでしょうか。

いいえ、決してそんなことはありません。

完璧に記録ができないのと意味が無いのは別問題です。

私はかつて医療従事者という「受動的な仕事」に従事しており、今は研究者という能動的な働き方ができる仕事に就いています。

そしてどちらの仕事に就いていた時でも、タスクシュートの効果は実感できていました。

そこで、両方の立場に就いていた経験から、受動的な仕事とタスクシュートの相性、そして対応策について考察してみようと思います。

「受動的な仕事」とは

「受動的な仕事」とはどのような仕事でしょうか。

しばしばビジネスの文脈では「受け身」「受動的」という言葉は否定的な意味で使われますが、「受動的な仕事」に否定的な意味合いはありません。

「受動的な仕事」とは、相手方のアクションへの対応がメインとなる仕事が該当すると思います。

お客様等への対応がタスクのスタートで、仕事のタスクを自分が始めたい時に能動的に始めることができない様な職種です。

私がかつて就いていた医療職は、究極に「受動的な仕事」だったと思います。

医療職の仕事において、多くのタスクの始まりや作業内容は、患者さんの来院状況や体調変化に依存します。

いつ初診の患者さんが来院するのか、どの患者さんにいつどんな体調変化が起こるのかなんて完璧な予測は不可能です。

すべてのタスクが割り込みタスクのようなものなので、あるタスクがいつ始まって、何分くらいで終わるのか事前に計画しておくことなんて無理なんです。

このように、基本的に受動的な仕事はタスクにランダム要素が強く予測不能という特徴があります。

受動的な仕事」は、タスクのランダム要素が強く予測不能という特徴を持つ

受動的な仕事」をリアルタイムに入力することはできない

結論として、「受動的な仕事」はタスクシュートとは相性が悪いと思います。

タスクシュートの強みは、タスクの実行と同時にタスクの実行履歴が生成され、その履歴がそのまま将来のタスクリストにもなるという点です。

また、実際にタスクリストを実行することで、そのタスクリストに無理が無いか、より効率的な行動が取れないかとレビューを同時にすることもできます。

こうした少ないアクションでタスク管理のプロセスを楽に回すことができるために続けやすいというのが、タスクシュートの強みです。

また、行動履歴に基づく陳腐化しにくいタスクリストが生成できるという点で、タスクシュートは仮に途絶えても再開しやすいというのも強みです。

とはいえ、受動的な仕事のタスクは突然始まります。

しかも始まった瞬間に行動を取らないといけない場面がほとんどのため、悠長にタスクシュートを起動している時間が無いのが実情です。

そのため、結局はタスク実行後に自分の行動を思い出しながらタスク実行履歴を入力していくことになります。

個人的には、後からタスクを入力すること自体は悪いことだとは思いません。

私もそのようにしていましたし、それもタスクシュートの使い方としてはアリです。

ですが、その”後から入力する”という使い方に完全に納得できるまでは、どうしても後からまとめて入力することが負担になったりします。

後からまとめて入力しなければいけないという面倒臭さや、記憶を頼りにした入力では不正確かもしれないという不安によって、タスクシュートを続けにくくなってしまうのです。

この"続けにくさ"が発生してしまうという点で、どうしても受け身の仕事に従事する方はタスクシュートを使う上で不利になります。

これらの問題は常にリアルタイムでタスク実行履歴をタスクシュートに入力できるならそもそも問題になりません。

しかし受動的な仕事をタスクシュートにリアルタイムですべて入力するのは不可能です。これだけはもうどうしようもないです。

「後から入力」でも続けていれば効果は得られる

ここまで、受動的な仕事がタスクシュートと相性が悪いということを説明してきました。

それでは相性が悪いとタスクシュートを使っても効果が無いかというと、決してそんなことはありません。

後からタスクを入力しても、タスクシュートは有効に作用します。

入力するタイミングが異なるだけで、タスクを入力するという手順を守ることはできているのです。

タスクシュートに過去のタスクを入力するのは、行動履歴を残すことであり、明日以降のタスクリストを作成することもあります。

また、自分の過去の思い出しながら記録するのは、レビュープロセスとしての効果もあります。

よって、後から入力してもタスクシュートの実践サイクルを回すことはできているので、タスクシュートは問題なく効果を発揮できるのです。

問題があるのは、後から入力するということの面倒臭さや、記録が不確かかもしれないという不安によって、タスクシュートが続かなくなる可能性が高まるということです。

効果自体には全く問題はありませんが、タスクシュートを信用できなくなることで、続けにくくなったり、効果を実感しにくくなる可能性があります。

結局はタスク管理自体が受動的な仕事と相性が悪い

ではもっと受動的な仕事と相性が良い他のタスク管理術を使用すべきでしょうか。

私もそう思い、色々とタスク管理術を試しましたが、結局はタスクシュートが一番続きました。

受動的な仕事をしていると、能動的な要素の強い仕事に就いている方よりは確かにタスクシュートが続けにくくなります。

しかし実のところ、受動的な仕事は他のタスク管理術とも相性が悪いのです。

他のタスク管理術の多くは、事前にタスクリストやチェックリストを作ったり、発生したタスクを分類したりします。

ですが受動的な仕事で発生する突発的なタスクについては、結局他のタスク管理術であっても、事前に予測したりタスクリストを完璧に用意したりできません。

そのため他のタスク管理術であっても継続できず、挫折してしまう可能性が高いのです。

一方で、受動的な仕事に就いていてもタスクシュートの「続けやすい」「再開しやすい」という特徴は変わりません。

私は常々思っていますが、タスク管理術を選ぶ上で最も大切なのは、続けられるかどうかです。

受動的な仕事に就いている以上、タスク管理が続かなくなることはあります。あって当然です。

ですがタスクシュートは再開しやすいのも強みです。再開しやすいから、仮にタスクシュートを放置する期間が発生したとしても、問題なく再開できるのです。

再開できれば大丈夫です。中断と再開を繰り返していれば、タスクシュートの効果は着実に得られます。

受動的な仕事に就いていても、最終的に一番続くのがタスクシュートなら、タスクシュートを使うべきなのです。

もちろんタスクシュートでなくても構いません。継続できるタスク管理ツールがあるならそれを信じて使い続けるべきです。

そもそも「受動的な仕事」はタスク管理で制御できるものではない

受動的な仕事である以上、タスクシュートに後からタスク履歴を入力するという状況は頻繁に発生します。

しかし前述のように、後から入力するという事態になってもタスクシュートは問題なく作用します。

そのためタスクシュートを信じて、そのまま使い続けるべきです。

とはいえ、それでも不安になるのはわかります。私もそうでした。

なんとなく100%の効果を完全に得ることが出来ていないという思いに対して、不安感もしくは不満感のようなものを感じるのです。

しかしそれはもうどうしようもありません。残念ながら一発で問題を解決できる対応策はないのでしょう。

例え不安であろうと受動的な仕事はタスク管理で完全に制御できるものではないと受け入れて、タスク管理を続けるしかないのです。

続けていれば、その状況に慣れてきて不安は感じなくなりますし、効果も実感できます。

結果的に不安がなくなり、効果が実感できるならそれで良いのですから、とにかく続けるのが楽になる一番の近道です。

繰り返しますが、後からタスクを入力していても何も問題は無いです。大丈夫です。

後から記録を入力したとしても、何もしないよりはずっと自分の時間の使い方を意識できています。

別にタスク管理のテストで100点を取らないといけない訳ではないのですから、完璧な形でなくても継続して良い効果が得られるなら何だって良いのです。

余談:完全に制御できないのは「能動的な仕事」でも同じ

受動的な仕事はタスク管理で完全に制御することはできないと書きましたが、それは能動的な仕事でも同じです。

そもそもこの世界で生じる事象は、タスク管理で制御できるものではありません。

結局世界はランダム要素を多分に含んで構成されています。

多少予測しやすい事象はあったとしても、毎日全く同じ日が続くことなんて決してありません。

タスク管理で毎日を完璧に制御しようとするのが間違いなんです。

大切なのは、ランダム要素を飲み込みつつ、自分の中でタスクとして昇華しつつ管理し続けることです。

タスクに落とし込んだ時点で、世界の事象とタスクリストには差が生まれています。

一方でタスクリストに落とし込まないと管理ができません。

そのため、結局は現実とタスクリストの差異を吸収して、柔軟に対応しながら上手く付き合っていくしかありませんし、極端に言えばそれがタスク管理というものだと思います。

受動的な仕事」と上手く付き合っていく

受動的な仕事はタスク管理とは相性が悪いです。

これはもうタスクシュートだけではないタスク管理の限界です。

どのタスク管理術であっても結局相性は悪いのですから、それを受け入れてタスク管理を続けるしかないです。

特にタスクシュートを使っていると、後からタスクを入力するしかないことで、なんとなく100%の効果が得られないように感じるかもしれませんが、他の方法は無いのでそれが得られる効果の100%です。

自分で100%ではないと勝手に疑っているだけです。

勝手に誤解してタスク管理を挫折してしまうのが一番もったいないです。

タスク管理のテストで100点を目指している訳ではないのですから、100%の効果が得られていないような「気がする」としても、結果的に良い効果が得られるなら別に何だって良いんです。

途中でタスク管理が続かなくなることもあるでしょう。それは当然なことです。誰でもそうです。

大切なのは、一時的に続かなくなっても、またタスク管理を再開できることです。

何度中断しても再開さえできれば、いつかは仕事効率が高まって問題は解決します。

そのため私達にできることとすれば、タスクシュートのようにできるだけ楽に中断と再開を繰り返すことができるタスク管理術を選び、それを信じて実践し続けることくらいでしょう。

受動的な仕事だからといって、タスク管理や時間管理の効果が無くなることはありません ※1

信じてタスク管理を続けてみてください。

本記事は以上です。ありがとうございました。

参考

※1 (研究がわかる方向け情報)Aeon B et al. Does time management work? A meta-analysis. PLoS One. 2021.
時間管理術に関する研究の結果では、仕事の自律性(job autonomy: 自分で仕事の計画を立てられるかどうかなど)と時間管理の効力はほとんど相関しなかったようです (r = 0.101, 95%CI: -0.060–0.256)。

  • この記事を書いた人

Kei

タスク管理やライフハックが好きな研究者|医学博士|株式会社CxO|タスクシュート認定トレーナー|主な発信内容はタスクシュートと研究です。

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